人との想像力のやり取りは、ちょっと嬉しい体験である

昨日はケーキを買って帰った。

帰りが遅かったこともあり、コンビニで買ったのだが。

そこで、ちょっと嬉しいな、と感じたことがあったので、残しておきたい。

長かった1日。

昨日もお仕事疲れた。

仕事中ぐったりしながら、長いなあ、と、ため息。

そんな1日の帰り道。

妻から連絡があった。

今日は記念日だから、コンビニでもいいので、ケーキを買ってきて欲しい。

とのこと。

そう。

何を隠そう昨日は、私たち夫婦が付き合い始めて、6年と5ヶ月の記念日だった。

毎月28日は記念日として、ケーキを食べてお祝いしている。

おっしゃ買って帰るか、と私は最寄り駅まで帰ってくると、近所のコンビニへ足を向けた。

1軒目、2個入りのケーキを2つ、スプーンが2本

あらかじめ買おうと思っていたコンビニの前に、もう一軒、別のコンビニがあった。

今後のためにもケーキの品揃えを確認しておこうと、立ち寄る。

「いらっしゃいませ!」

店員さんの元気な挨拶が聞こえてきた。

コンビニにしては珍しいなあ、と感じつつ、さっそくデザートのコーナーへ。

おお、あるある。

すぐに見つけたのは、「バスク風チーズケーキ」2個入り。

これは美味しそう。

甘いものが苦手な妻でも、チーズケーキは好きだ。

しかし、その隣にあるケーキに、チョコの気配がした。

甘いものに目がない、私のチョコセンサーが反応している。

よく見ると「トリフルケーキ」の文字。

トリフルケーキ?

調べてみると、ガナッシュに杏ジャムがサンドされたザッハトルテのようなケーキ、とな。

おじさんには横文字は分からんよ。

不二家のケーキなので、間違いなく美味しいだろう。

え、これも2個入りやん。

これにする?

しかし、冒険すぎないか?

ここは無難にチーズケーキでは?

瞬時に脳内会議が開かれた。

もう一軒、行きたいコンビニがあるのに。

まあ、記念日だし。明日も食べればいいし。

結局、己の欲望に抗えず、いや、素直にどちらも食べたくて、両方買うことにした。

レジにて先程の元気な店員さん。

ハキハキと丁寧な接客をしてくれた。

一緒にお祝いしてくれているみたいで、なんかちょっと嬉しかった。

デザートスプーンを2本、入れてくれた。

2軒目、2個入りのケーキを2つ、フォークが4本

次のコンビニに向かった。

もうすでにケーキは手に入れているので、正直、消化試合だ。

まあ一応、確認しておこうと思った。

コンビニに入るとすぐに、食パンが置いてある。

いつもの割引シールチェック。

お、1つ発見。

買おうかなー、どうしよかなー。迷いながら、とりあえず目当てのケーキを探しにデザートコーナーへ。

あったあった、とすぐに目に飛び込んできたのは、「生チョコモンブラン」の文字。

な、生チョコモンブラン、だとぉ……!

なんて甘くて美味しいそうな響き。

となりには王道の苺のショートケーキ。

こちらのほうが、甘いものが苦手な妻も美味しく食べられる。

しかし、生チョコモンブラン。

どう考えても甘い。

甘いものに目がない私には分かる。

これは甘い。

私にだけ甘いやつや。

妻はたぶん、食べれなくはないけど、甘すぎて眉間にシワを寄せるだろう。

え、どっちにする……?

どちらも2個入りだったので、どちらか一方を買えば2人で楽しめる。

は? でもさっきのコンビニでもう買ったよね。

バカヤロウ! お祝いには、苺のショートケーキがピッタリだろ!

え、でも、生チョコモンブラン……

自分だけが美味しい思いをしていいのかい?

葛藤。

私の中の天使と悪魔が言い争っている。

傍から見れば、むさくるしい男が、2個入りケーキが2つ、つまり合計4個のケーキが入った袋を片手に、ケーキの前で、呆然と立ち尽くしている。

どんだけケーキ買うねん。

買いすぎよ。お給料も少ないのだから、我慢すべきよ!

天使が忠告。

どっちも買っちまえよ!

悪魔のささやき。

うん。どっちも買うわ。

今日、お仕事がんばったし。明日もがんばるし。

疲れた脳に、甘いものへの抑制はきかない。

いい勉強になったな。

私はカゴを手に取り、さきほどの割引シールのついた食パンと、苺のショートケーキ、生チョコモンブランを入れて、レジに並んだ。

ちょっと嬉しい話

やっと本題に入る。

2軒目のコンビニでお会計をしているときだった。

大学生くらいかな、若い男性の店員さんが、商品をスキャンして、ポイントカードを読み込んで、一瞬迷ってから、こう聞いてくれたのだ。

「フォーク……4つでいいですか?」

あ、はい。人見知りの私は目を合わせることもできず、小さく頷くしかできなかった。

この何気ないやり取りが、そのときは特に何とも思わなかったのだが、今になっても、すごく記憶に残っているのだ。

なぜだろう、と考えてみたの。

ケーキは夫婦でいただくので、フォークの数は、本当は2本で足りる。

そんな事情を店員さんは知るわけもなく、2個入りのケーキを2つ買うから、4本のフォークを入れてくれたのだろう。

ケーキが全部で4つあるのだから、4人で食べるはず、と、あの一瞬で判断したのかもしれない。

しかし、2個入りのケーキ2つ、つまり商品は2つだから、フォークも2本にする、という選択もあったはずである。

実際に、1軒目の元気な店員さんが入れてくれたのは、デザートスプーン2本だった。

それだけでも十分有り難い。

ということは、普通は2本でいいところを、4本入れてくれたから嬉しかったのか。

いや、ちがう。

買う商品を見て、一瞬の間があって、4本でいいですか、という提案をしてくれたのが、嬉しかったのだ。

店員さんがどういう想像をしたのかは分からないが、その「想像する」というのが大事な気がする。

2個入りのケーキを2つ買うお客さん。

全部1人で食べるのかもしれない。

仲の良い2人で分け合うのかもしれない。

4人でプチパーティでもするのかもしれない。

想像力って面白いよね。

それが人から人からへ、無意識のうちに、やり取りされたら、ちょっと嬉しいよね。

そんなふうに感じる出来事だった。

一番最初はチーズケーキを食べた。

美味しかった。

残りのケーキも楽しみである。

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